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最初から最後まで ![]()
主人公の、ただ「自分の子供を探してほしい」という訴えは、結果そのものを問わないとすれば、
訴えそのものはシンプルなはず…。
けど、その思いが届くのが、こんなに困難だとは…。
ヒトに対するつじつま合わせなんて、成り立つはずもないのに…。
でも、このつじつま合わせがどこか身近に思えてしまって、自分でもちょっと怖くなりました…。
悲しいというよりは苦しいという感じです ![]()
この映画はストーリーを味わう、その雰囲気を感じるもの、というよりは、その重い暗い事実をみっちり時間内に集約して「現実にはこんなにも悲惨なことがある」というのを訴えかけてくる、ドキュメンタリーやニュースを見ている感じでした。作品内での殺人や警察、精神科病棟での出来事など、どれもあまり救いのない状態でした。最終的に、物語内では一応その悪も収束を見せますが、しかしそれが事実であると謳っているゆえに、それが物語内だけでなく現実でこの事件の他にも起こっていうるという可能性を突き付けられ、私にとっては後味の悪い映画でした。何かを考えるきっかけになると言えるかもしれませんが、しかしこの映画上に出てくる悪というのは、あまりにも悲惨でそして種類も豊富であったので、世の中の普段知らずと感じている悪のちょっと悪めの具体例を挙げてもらっているような視聴感で、「考える」というのも何か違う気がしました。
問題提起の作品 ![]()
イーストウッドはアメリカの「正義」というものを信用している、映画監督である。いや、アメリカの現実が、彼の理想とは違うから、いつまでもこういう作品を作り続けねばならない。「愛」や「勇気」が映画や小説のテーマになりうるのは、それらが現実に、あまりにも希薄だからだ。「権力」というシステムは、個人を抹殺してしまえるほど強力だ。警察の腐敗を裁く司法も、殺人犯を死刑に処する司法も、無関係の人間を精神病院に送りこむ警察も、全てがシステムであるには変わりない。システムの前に、個人はあまりにも無力である。それを、告発し続ける力が市民社会にあるのかどうか、そのことを強く意識せざるを得ない映画である。長丁場だが、飽きさせないし、各人のキャラがよくたっている。映像も、当時の雰囲気をよくとらえていると思う。周防正行の「それでも僕はやってない」と重なるところがある作品である。
「希望」を可能にする「残酷」について ![]()
まず、これが実話だという事実に身の気がよだつ。
犯罪者と警察組織に徹底的にイタぶられる主人公の人生。絶望的に救いがない状況で、社会的に主人公を救ったのは田舎刑事やラジオ伝道師、熱血弁護士、そしてデモに参加した一般人達である。映画を通して描かれる、こういった人々の正義心には素直に打たれる。(無言で見守る職場の上司もいい味出してます。)でも、息子に再会できない限り、主人公の魂は救われないのだ。だから、警察上層部や犯人が裁きを受けても、全く主人公の顔は晴れない。
「自分を信じる」「希望を持つ」という類の言葉を口にすることは簡単だが、限界状況で「希望を持ち続けること」がどれだけ複雑かつ大変なことか。この主人公の場合、息子の生死がはっきりしておらず、それゆえ息子を諦めることができないという境遇に置かれている。「諦めることができない」ということをポジティブに言い換えたら、「いつか息子に再会できるかもしれない」という希望になるのだが、この希望は「真実を知ることができない」という非常に過酷な境遇の裏返しにより可能なのだ。真実が謎に包まれている以上、どんなに辛くても絶望なんかできる訳がないではないか。だからこそ、主人公はより過酷な道を選ぶしかなかったんじゃないか。「親は強い」とかそういう薄っぺらな感動話なのではなく、半ば「それしか選択肢が無かった」のだと思う。
このお話は、絶望を希望で超克するという類の、よくあるお涙頂戴話ではない。悲劇と感動の物語だと思ってみると裏切られます。でも、何十年にも及ぶ映画産業キャリアで、一貫して「生死」を描いてきたイーストウッドだからこそ、「希望を持ち続けること」を深掘りし、その希望の背景となる複雑さ、残酷さも織り込めたのだと思う。こんな複雑な色合いを持つシナリオが、ハリウッドみたいなアホな場所で映画に仕上げられたということは、奇蹟的なことだ。こんなことを可能にするイーストウッドの存在自体が奇跡みたいなもんじゃないか。
P.S.
僕はこのレビューを書きながら、ふと「大人の事情」で解決が棚上げになっている某国による拉致事件の被害者家族のことを思い出した。全く同じ状況なんじゃないか、コレ。
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